30歳女性独身です。私が大学2年生の時、私と姉・母・祖母の4人で鎌倉へ旅行に出掛けたのですがその際に奇妙な体験をしました。私が通う大学では早めに就職活動が始まるので大学3年生の新学期から就活セミナーが数多く催されます。卒業論文の準備や大学の講義も増える時期ですから非常に忙しくなることが想定されていました。その為大学2年生の最後の春休みに3つ上の姉と母、そして祖母と2泊3日の旅行に出掛けました。当時祖母は87歳と高齢だったこともあり、遠出はせずに都心から比較的近い場所に位置する鎌倉を選びました。
その日の天候は、春とは思えない位に快晴で日光が眩しいほどでした。朝早くに新宿を出発し、約2時間かけて鎌倉へ到着したので午前中から鎌倉の大仏を観光しに向かいました。そこで不思議な現象が起こりました。大仏の前には多くの観光客が集まっており、外国人観光客も多く大変賑わっていました。みな大仏の写真をカメラに収めたり、大仏を背にして記念写真を撮るなど其々が楽しい時間を過ごしていました。
私たちも例外ではなく大仏を遠くから眺めたり大仏の中に入ってみるなど楽しんでいました。そして一通り観光を終えた所で記念写真を撮ることになりました。私がカメラマン役を担わされ、まずは姉と母、祖母の3人で集合写真を撮りました。不思議なことと言うのはこの時に撮影した写真ではなく、私のあるものに起こりました。私がカメラの写真を確認し終え、姉にカメラを渡そうとした時です。姉が「あれ何?」と私の後ろを指差しました。指差したものは私の「影」でした。しかし影は不自然な形をしており、一本線に伸びているのではなく何故か頭の部分が2つに分かれていたのです。私も振り返って自分の影を見ようとすると、自身の影なので完全に見ることは出来ませんが一瞬確かに目視しました。まるでうさぎの耳のように、ハート型のように、あるいは魚が口を開いた影のような形をした影を確かにこの目で見たのです。しかもそれは私と姉だけでなく、母と祖母にも見えていました。
その日は日差しが強く影がはっきりと地面に映っていたのですが、そもそも影が割れるだなんて聞いたことがありません。ましてやハートマークのような形状をしたものの影でもなく私の体の影なのです。少し歩いてみましたが影は先端が2つに割れた形を保ったまま私の後を付いてきます。しかし姉たちの影は至って通常の「人間の影」なのです。何故か私だけの影がぱっくりと割れており、次第に不気味になってきたので私は急いで近くの休憩所へ向かいました。姉や母・祖母も私と同じ位に困惑しており、その後直ぐにその場を後にしました。
私は不気味に割れた影が何かの見間違いなのではないか、もしくは何か強い光のようなものが影に当たって割れたように見えたのではないか、とあらゆる可能性を考えました。正直思い返すことすら薄気味悪かったのですが、何かのせいにしたい衝動が勝っていたのです。特に自然光といった目に見えるもののせいにしようと思い、心霊的なものではないと強く信じ込むよう自分に言い聞かせました。それでも鳥肌は立ちましたし、その時にその場にいた他の観光客の影も見ましたが明らかに私の影だけが奇妙に裂けていたのですから恐怖しかありませんでした。ただ、私の周囲にいた観光客は私たちが奇妙な影に気付いて困惑している最中、特に私の影を気にする様子はありませんでした。つまり私たち家族だけが裂けた影を目撃したという事実に自分で気付いた時は、あまりにも不気味で家族にすらこの事実を話すことが出来ませんでした。
幸い家族旅行であったこともあり私が1人の時に起きた現象ではなかったことはその後平常心を取り戻すまでに大きな支えとなりました。母は急いで飲み物を買ってきてくれたり、午後は別の場所へ観光に向かう予定でしたが急遽予定を変更してくれるなど姉や祖母も私を気遣って協力してくれました。もし1人きりの時にあの影を目撃していたらと思うと、家族が一緒に居てくれたことは本当に良かったと今でも感謝しています。後悔と言えば大仏の中へ入った時、感極まって少々はしゃいでしまったことです。大仏の中に入ることを胎内拝観と言うのですが、大仏様の胎内という神聖な領域において興奮のあまりやや大きな声ではしゃいだことが不謹慎に思えてしまい、不謹慎と言うまでの不適切極まりない行動を取った訳ではないものの暫くは自分を責めては後悔しました。やはり神聖な場所で大きな声など発するものではなく慎ましやかに拝観すべきだったと悔やまれます。ただ、少々はしゃいだことが直接の影の原因と考えることもやや無理がありますし今でも影の原因は分かっていません。
そもそも不思議な体験や霊感に疎いタイプなので、この「裂けた影」という経験は自身にとって初めての出来事でした。もちろん他の方も不思議な経験は滅多にしないと思われますが、唯一皆さんにお伝え出来ることと言えば、神聖な場所では声を殆ど出さないよう慎ましく行動するべきということに限ります。神社仏閣のような明らかに神聖な領域だけでなく、今回の大仏様の中のように観光客で賑わう場所でも自分だけははしゃがないよう意識するべきだと思います。私が大仏様の中に入った際も私たち家族の他に数名の観光客が一緒に居ましたし、他の観光客は私の何倍も大きな声を出したり声が胎内で大きく反響することを面白がってわざと声を張り上げたりしていました。無論だからと言って私が少々大きな声ではしゃいだことが許されることではないと反省していますが、大げさな行動や不謹慎な行動ではなくとも無意識のうちの僅かな行動が何か悪いものを引き寄せてしまったように思えてならないのです。影の原因が不明な今、明確なアドバイスは難しいのですが少なくとも他の人に同調して不謹慎な行動をしないよう心掛けるべきだとお伝えしたいです。